1.日本で有名な猿の昔話…西暦1500年~1600年、室町時代末期から江戸時代の初めころに作られたとされる、「桃太郎」と「さるかに合戦」は日本五大昔話にも入っていて、日本人によく知られているお話です。(ほかの五大昔話は「かちかち山」、「舌切り雀」、「花咲爺」)「さるかに合戦」は、「猴子与螃蟹」などの中国語訳があります。

2.日本各地のほか、中国や世界にも伝わっている猿の昔話…「猿の生き肝」とか「くらげ骨なし」と呼ばれている話は、紀元前4~紀元1世紀頃に成立したインドの仏教説話集『ジャータカ』の中の説話が、インドから中国や日本、タイやベトナムなど、アジア全域に伝わったとされ、東ヨーロッパや、アフリカ、南アメリカにも似た話が伝わっています。中国に伝わる民話は「猴子与乌龟」「猴子与鳖打老庚」などです。

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3.孫悟空はインドから来た?…孫悟空の元になっているのは、インドで3世紀頃にまとめられた叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する、猿の神様ハヌマーンだという説があります。

4.猿と神社との結びつき…日本には、日枝神社・日吉神社・山王神社という名前の神社が全国に約3800社あり、猿を神様の使い(神使)としています。これらの神社では、もともと滋賀県比叡山の神様だった「大山咋神」(おおやまくいのかみ)を祀っています。日本の天台宗開祖である僧侶・最澄が延暦寺を開いた時に、比叡山一帯で信仰されていた神々を寺の守護神に定め、「山王」と呼ぶようになりました。天台宗とともに神仏習合の山王信仰も日本全国に広がっていきました。また、道ひらきの神様「猿田彦神」を祀る神社も猿を神使としています。

5.猿と庚申信仰…猿は、中国の道教に由来する庚申信仰とも結びつきました。人間の体内にいる三尸(さんし)という3種類の虫は、庚申(かのえさる、こうしん)の日の夜、人が眠った隙に体から抜けだして、天帝にその人の悪事を報告するので、寿命を縮められてしまう―という民間道教の思想が、700年代の奈良時代の頃に日本に伝わりました。庚申の日に夜明かしをする風習は貴族から武士へと広がり、1600年代の江戸時代には庶民の間でも盛んになりました。庚申信仰は、仏教や神道、民間信仰と結びついて複合的な信仰になり、仏教では夜叉神「青面金剛」(しょうめんこんごう)を、神道では猿田彦神を祀るようになり、山王信仰の山王が祀られることもありました。また、庚申の日にちなんで、17世紀中頃には「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿(さんざる・さんえん)が、青面金剛の足元に添えられたり、「庚申塔」という石で作った塔に、三猿が彫り込まれることもありました。

6.猿神信仰に見る猿のイメージの変化…また、猿の神様を崇める猿神信仰も存在しましたが、日本の説話集『今昔物語』には、女性の生け贄を要求する猿神が登場し、猟師や生け贄になった娘が退治する話が残っており、長い歴史の中で、人と動物の関係が変化してきたことを表しているようです。

参考:「猿のイメージに関する一考察―中国のことばと文化」鄭高咏

【出演】スタッフB、ゲスト・パンダさん↓
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